はるひ乃メソッド

とある不動産屋が思いつくことを気ままに書いてみた

【実話シリーズ】契約後に売主さんが亡くなられた話【アンビリバボー】

 

来ちゃったの?ありがとう!せっかくだから、ゆっくりしていってね!

 

 

 

※この記事は個人を特定できない程度の表現で掲載しておりますが、当事者様からの申し出があった場合は予告なく内容を変更したり削除する場合があります。

 

契約後に売主さんが亡くなられた話

 

 


土地の売買で無事契約が終わり、決済を待つばかりの物件がありました。

 

売主さんはもともと持病をお持ちの方で、契約後に治療と検査を兼ねて2~3日入院するとご連絡がありました。お体の調子がよろしくないと言っても、電話での口調はハッキリしていらっしゃって、私は大して心配もしておりませんでした。


ところが、入院2日目だったと記憶していますが、売主さんの奥さんから連絡がありました。

 

 

 

「昨夜…主人が急死しました」

 

 

 

え?

 

 

 

えええええええっ!!!??

 

 


何でよ!?

 

 


つい2日前に電話で話したばかりやん・・・。

 

 


ちょっとにわかには信じ難い、というより受け入れ難い状況に戸惑いましたが、まずは何より奥さんがいちばん大変な思いをされていらっしゃるはずなので、不動産の売買契約のことについては気にされず、ご葬儀や諸々の手続き等が終わり落ち着きましたらご連絡ください、とだけお伝えして電話を切りました。

 

こういったアクシデントのときこそトラブルに発展しないよう調整するのが仲介業者としての務めです。私もかなりショックでしたが動揺している場合ではありません。

 

すぐに買主さんや家を建てるハウスメーカーの担当者さん、所有権移転等を行う司法書士に連絡して事情を説明しました。

 

物件の引渡しが契約上で定めた日にちに間に合わないと判断したため、まず最優先すべきことは引渡し日延期の承諾を買主さんから得ることです。

 

翌日に買主さんとお会いし引渡し日の延期を承諾してもらい、物件引渡し日を延期する旨の覚書に署名いただきました。買主さんも相当不安でいらっしゃったはずですが、事情を説明するとご理解いただけました。

 

 

次にすべきことは、売主さんがお亡くなりになり物件の所有者が不在になったわけですから、そのままでは物件の引渡しが出来ません。

 

売買を成立させるためには相続登記が必要です。

実は今回の売買対象の土地については、売主さんが父親から相続した土地でしたが相続登記をまだ終えていない状況だったので、契約前に相続登記を終えたばかりだったんです。


ですから、その相続登記を行ったN司法書士にも連絡し状況を説明し、相続登記の依頼をする可能性が高いので準備に入ってもらいました。

1ヶ月も経たずに同じ土地の相続をするなんてことになるなんて、N司法書士も驚かれたに違いありません。もちろん作業自体は、お亡くなりになられた売主さんの奥さんから連絡を頂いてからです。

 

 

正直なところ、相続登記にどれだけの期間を要するか見当がつかない状況でしたので私自身も不安がありました。

 

 

余談ですが、このときの所有権移転担当のT司法書士には相当イラッ☆としました。

 

決済日の延期に関して、買主さんやハウスメーカー担当者さんは、事情が事情なのですんなり承諾して頂けましたが、担当のT司法書士だけは「今すぐ相続登記すれば、当初予定の決済日に間に合うんじゃないですか?」と不快な対応をされました。

 

は??? 昨日ご主人が亡くなった方に対して

 

「決済日に間に合わせたいから今すぐ相続登記の手続きしますよ。必要な書類と費用はこれこれですよ。時間無いんでちゃっちゃと準備してくださいね~!」


とでも話せってか?

 

この司法書士はハウスメーカーが指定してきた司法書士なんですが、二度と会うことはないだろうし本人がここを読むことも無いだろうからハッキリ言います。

 

 

 

バカじゃねーの?

 

 

 

もう1回…

 

 

バカじゃねーの?

 

 

大事なことなので2回言い… 

 

 

この発言以外にも頭に来たことが幾つかあったけど、とにかく何でも自己都合だけで仕事を進めようとするタイプで、相当気持ち悪いイヤなやつでした。


今まで何十人も司法書士とは一緒に仕事させてもらったけど、こんなアホ司法書士は初めてでしたヽ(`Д´)ノ

 

 

 

と、ここまで読まれている方の中には契約の当事者の一方が亡くなられた場合に締結済みの契約自体は有効なのか?


って疑問を持たれてる方がいらっしゃるかもしれませんので補足しておきます。

 

 

当事者が亡くなられたときの契約の有効性

 

結論から言うと、不動産売買契約締結後に当事者の一方が亡くなっても契約は有効です。

 

不動産売買契約を締結するということは、その時点で売買は成立しています。


物件の引渡しである決済日が契約日より1~2ヶ月後に行われるのは、あくまでも引渡しの準備に要する期間の都合によるものです。

※買主さんが現金で売買代金の決済をされ、なおかつ売主さんがいつでも物件の引渡しが可能な状況であれば、売買契約と同時に代金の授受と所有権移転を行うこともあります。


ですから、売買契約締結後に売主さんが亡くなられた場合、買主さんから売買代金を受け取る権利と買主さんに物件を引渡す義務は有効であり、相続人が契約内容を履行する義務があります。契約を履行しなければ、契約内容に沿った違約金の支払いが発生してしまいます。

 

逆に買主さんが亡くなられたときも同様です。

売主さんから物件の引渡しを受ける権利があり、売主さんへ売買代金を支払う義務は有効です。

しかし、(統計を見聞きしたことないんで断言はできませんが)買主さんが住宅ローンを利用される場合は、白紙解約になるケースが多いのではないかと思います。

 

というのは、買主さんが住宅ローンを利用される場合の不動産売買契約には、必ず「融資利用の特約」があります。簡単に言えば、買主さんが予定している金融機関からの融資の承認が下りなかったとき契約自体が白紙解約になるというものです。

 

一般的にこの「融資利用の特約」には期限が設けられており、その期日前に買主さんが亡くなられた場合は、当然白紙解約になるでしょう。

 

仮に融資の承認が確定していたとしても、相続人がその承認を引き継ぐことはできません。一般的には相続人は買主さんの配偶者(夫・妻)とお子さんになるでしょうが、お子さんが未成年である可能性が高いことを考えれば、新たに配偶者(夫・妻)が住宅ローンの申し込みを行う必要がありますが、ぶっちゃけ私は非現実的だと思います。


家族で住む家のために長期間のローンを組んでまで不動産を購入するわけですが、その家族のうちひとりが亡くなられたわけです。色々と今後の計画をじっくりと考え直す期間が欲しいですよね。まずは一旦、白紙解約する方向で考えることが適当ではないかと思います。

なお、売買代金を保険金などで現金にて一括で支払うケースもあるようです。

 

 

 

スムーズに進んだ相続登記

 

ご主人のご葬儀を終えられた奥さんから連絡をいただき、お会いして今後について打ち合わせを行いました。


まずは相続登記です。これを完了しないことには何も進められません。

 

亡くなられた売主さんが行った前回の相続登記を行った際に、ご両親がすでに他界されていることや売主さんは一人っ子でご兄弟姉妹がいらっしゃらないこと、また、売主さんご夫婦にお子さんがいらっしゃらないとのことなどを知っていました。

 

お叱りを受けるかもしれない不謹慎なことなんですが、私は正直なところ「助かった~」と思っていました。なぜなら、相続登記がスムーズに進むと思ったからです。

 

相続人が多ければ、特にお子さんがいらっしゃらない場合、疎遠な親戚同士が相続人になったりするケースがあります。その場合遺産分割協議で揉めることが多々あるんです。

そうなると相続登記が完了するまでに1年以上掛かることも珍しくありません。

※実際にそういった案件が過去にありました。ここでは長くなるので別の機会に書きますね。

 

現状で相続人は奥さんお一人であると可能性が極めて高いことに、私は不謹慎ながらホッとしていました。

※しかし確定は出来ません・・・奥さんの知らないところで非嫡出子の存在があるかもしれませんから…(´・ω・`)

 


以下は参考程度に。

 

お子さんがいらっしゃらないご夫婦で配偶者がお亡くなりになられたときに、全てを相続できると誤解されていらっしゃる方が多いみたいですが、法定相続人の順位は下記のとおりです。

 

①配偶者(常に相続人)

②1位:子ども

③2位:父母

④3位:兄弟姉妹

 

ですから、お子さんがいらっしゃらない方で親が存命であれば、相続人は「配偶者+父母」になり、

お子さん、親がいらっしゃらない方であれば、相続人は「配偶者+兄弟姉妹」になります。

※兄弟姉妹がお亡くなりになっていれば、代襲相続としてその兄弟姉妹のお子さん(被相続人からみて甥姪)になります。

 

 

 

 

相続人が奥さんお一人である可能性が高いと判断した上で、手付金の倍返しで契約を破棄することもできることをお伝えし、契約を履行するか否かお聞きしたところ、契約を進めますとの回答。むしろ、買主さんに対してご迷惑をお掛けし申し訳ないとすごくお気遣いをいただきました。

 

ここでさらにホッとしました。


本当に不謹慎ですが、これでほぼ予定通りに物件の引渡しが可能である道筋がほぼ確定したんです。

奥さんに「売るのやめます」なんて言われたら買主さんに合わす顔がありません。涙目必至です。まあ、私のメンツなんて二の次ではありますがね…('A`)

 

相続登記については、予定どおり事前に相談し準備を進めていたN司法書士に依頼することになりました。

 

ちなみにこのN司法書士は、司法書士・土地家屋調査士・行政書士の3つの業務を行われている優秀な方です。ただ資格を持っているだけのマニアは多いけど、実際に業務としてきちんと実働されています。

※優秀な士業をお探しの方はお声掛けください。ご紹介いたしますね。

 


で、登記については相続人が奥さん以外に存在せず最速で完了いたしました。

 

 

 

物件の引渡し…そして拭えない悔しさ

 

相続登記が完了した後、決済(引渡し)です。

 

一般的に、買主さんが住宅ローンを利用する際の決済は、買主さんが融資を受ける銀行にて、売主さん買主さん、所有権移転を行う担当司法書士、仲介会社の担当者等が集まって行います。

 

ですが今回の決済については、担当司法書士が事前に売主さんと事前面談及び必要書類の署名を済ませる売主不参加の形を取らせていただきました。余計なお節介ですが、私なりにお気遣いさせていただいたつもりです。

 

何はともあれ、関係する方々のご協力のもと売買取引の全てが完了いたしました。


今までアクシデントがある度に周りの方々に助けられ乗り越えてきました。その度にいつも思いますが、人間って本当に一人では何にも出来ないですね。周りの方々の協力が重要です。

 

特に売主さんの奥さんには、ご主人が亡くなられたばかりで悲しみの中、全てのことにきちんと対応していただいたことに感謝でした。

奥さんは看護師でいらっしゃったので、人の死に対して一般の方よりも対応力がおありだったのかもしれません。もしかしたら我々の前だけは気丈に振る舞われていらっしゃったのかもしれまん。

 

いずれにしても、奥さんに対しては感謝の気持ちしかありません。

 

ご葬儀が終えられてすぐに連絡をいただき、相続登記の手続きも売買物件の引渡しもスムーズに進められたのは奥さんのおかげでした。

 

 

 

売主さんが亡くなられた後に奥さんから伺った話で、足が不自由だった売主さんは土地を売ったお金でバリアフリーの家に引越したい旨のことを語っていらっしゃったそうです。

 


私は普段から、お客さんの「したい暮らし」の実現が不動産売買業者の役割だと偉そうに言ってますが、今回の件については全うできませんでした。

 

もちろん、それは私の落ち度ではありませんし、予期せぬ事態に対しやれることは全てきっちりとやりきった自負もあります。しかし、どうしても悔しさと寂しさの入り混じった何とも言えない気持ちは拭えません。

 

正直、今でも悔しいです。 

 

しかし私は、この気持を消し去ろうとは思いません。

やり場のない悔しさと売主さんご夫妻に対する敬意と感謝の気持ちをいつまでも持ち続けたいと思っています。

 

 

 


今回はここまで。今日という日があなたにとって良い1日でありますように。

 

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