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ちょっと前に興味深い記事を読んだ。
認知症などで判断能力が十分ではない人の生活を支える成年後見制度をめぐり、最高裁判所は18日、後見人には「身近な親族を選任することが望ましい」との考え方を示した。
後見人になった家族の不正などを背景に弁護士ら専門職の選任が増えていたが、この傾向が大きく変わる可能性がある。同日開かれた制度の利用促進をはかる国の専門家会議で、最高裁が明らかにした。
これまでは各家庭裁判所が親族らの不正を防ぐ観点から専門職の選任を増やしてきた。だが、制度の利用は低迷。
こうした中で、国は2017年に利用促進の計画を策定し、見直しに着手した。利用者がメリットを実感できる仕組みに変える一環として、最高裁は今回初めて選任に関して具体的な考えを表明した。
今年1月に各地の家庭裁判所に通知したという。
(朝日新聞社)
記事の内容は、最高裁が後見人の選任において、身近な親族を選んだらどうよ?と、家裁に改善するよう口出ししてるわけです。
現在の成年後見制度の状況を知っている方ならご理解出来ると思いますが、これって成年後見制度の最大の問題点をピンポイントで浮き彫りにした記事ですよね。
どういうことか?
成年後見制度の現状を知らない方の参考になればいいかなってレベルで、現在の成年後見制度について私見を書いてみます。
※【閲覧注意】長文ですよ~!内容はあくまでも私見ですよ~!
読む前に読んで!
今回は認知症高齢者について、不動産屋としての観点からやたら長々と語りますが、以下の方は私の意見など不要なので、この長ったらしい記事を読むことないです。時間の無駄で申し訳ないです。
- 親が認知症になったとしても、全く困らない気力と財力がある。
- 私(もしくは自分の親)は、何があっても病気せず、ケガせず、ボケず、ピンピンコロリで天寿を全うすると断定している。
そう、どんな状況になったとしても、誰の世話にならなくても自力で生きていける方には必要のない内容です。
避けては通れない老後の準備
日本は長寿国だとして有名で、平均寿命も何年も世界一位(WHO発表データ)ですよね。特に女性はずっと1位。
男性の寿命はそうでもないけど…(´・ω・`)
しかし、平均長寿=健康寿命ではありませんよね。
残念ながら亡くなる前の10年前後ぐらいの期間は、誰かの介護を受けながらの生活になる方が多いようです。誰だってピンピンコロリが理想ですが、なかなかそうはいかないものです。
平均寿命が伸びるに伴い、社会保障や介護人不足などといった今まで無かった社会問題が増加してきました。認知症高齢者の増加も、そういった時代背景のもと新しく生まれた社会問題のひとつです。
※高齢化問題は相当以前から問題提起している専門家も多々いたはずなんですが、国家?人?って問題に直面して窮地にならない限り動かないもんですねぇ・・・。
老後のための資金準備
まず伝えたい・・・
不動産は売れるときに売っとけ!
私たちが「不動産は売れるときに売っとけ」なんて言うと「商売上自分達に都合の良いこと言ってやがるな」なんて思われがちなんで、真剣に話を聞いてくれる相手以外には基本的にこんなこと言いません…('A`)
何でいきなりこんなこと言うのか?
介護が必要になった高齢者が介護施設入居するには、当たり前のことですが「お金」が必要であり、事前に確保しておかなければなりません。介護にかかるお金は、基本的には要介護者の預貯金や年金から捻出することになると思います。
しかし、現金に余裕のある人ばかりではなく、主な財産といえば現在の住まい、つまり所有不動産である方が多いようです。
実際に高齢者の方が施設入居のため持ち家を売却するケースは非常に多く、この数年間そういった案件が増加の傾向にあると私自身、普段の業務上そう感じています。
高齢者であるご本人からの売却依頼もあれば、そのご家族からの依頼もあります。いずれにしても、こういった方々は先を見据えた賢明な方達です。
というのは、実は「お金がなくて困った!不動産を売ろう!しかし、所有者である父親は認知症で判断能力がない!」といったケースも少なくないからです。
これ、手遅れです。売れません。
私は商売柄こういったケースを時おりお見掛けします。
売るには、もう成年後見制度の申立てを行うしか手段はありません。ところが、福岡だと申立てから確定(法定後見の開始)まで4~5ヶ月掛かります。
さらにそこから不動産を売却する許可を得たり、何だかんだで現金化するまでに1年ぐらいは覚悟が必要です。
いやいやそもそも、売ることすら認められないケースもあったり・・・。
また、法定後見人が選任された場合は報酬が発生するので、財産は目減りしていきます。
転ばぬ先の杖
将来的に介護が必要になると予想でき、なおかつ経済的に不安があるなら、老後の必要資金の調達や運用について、親子でしっかりと計画を立てるべきです。
ここでいう経済的不安というのは、高齢者本人が財産を持っているから大丈夫! では 無い んですよ。
認知症になってしまったら、その財産は凍結されてしまいます。
財産を運用するには成年後見制度を利用するしか手立てはありません。
もし、財産を親族が生活する上での資金計画に組み込まれている場合は、大幅に計画を変更しなくてはなりません。なぜなら、成年後見制度を利用するのであれば、被後見人の財産は本人のためにしか使うことが出来なくなるからです。
また、認知症になってしまった方が施設に入居するための費用や医療費などに使えるお金を一時的に周りの親族が確保しておくことが必要になります。
事前にしっかりとした打ち合わせが重要です。
しかし、ご本人自らが老い支度として計画を立てることはあるでしょうが、お子さんの立場で、まだ元気な親に対して「ボケたときのために事前に対策しようや」なんて言えますか?
正直なところ、私は言いきらんです。
そこで私たちのような専門家の出番ですよ。第三者の行ういざという時のための手法や実例の説明は素直に聞きやすいものです。もしここをご覧になっている方で、心配事のある方は遠慮なくご相談ください!
将来的に不要であることが確定している不動産は売却すべきです。利用する予定もないのに意味もなく所有し続ける方がわりと多いんですが、私には全く理解出来ません。
将来値上がりするかもしれない?値下がりするかもしれませんよ?投機目的の話はやめましょう。
しかしながら、計画的に進めても財産整理が後手になったり、不動産を売るタイミングを逃すこともあります。人生理想通りには行きません。
でも、これだけは覚えておいて欲しいことが・・・
成年後見制度を利用する状況を作るな!
です。
成年後見制度とは
まず、成年後見制度をご存じない方に説明を。
簡単に言えば、判断能力が衰えてしまった方の財産を管理したり、不利益な契約(法律行為)をして被害にあったりしないよう保護し支援する目的で、「本人に代わって財産を管理する人を裁判所に選んでもうらう」制度のことです。
判断能力が衰えるとは、認知症・知的障害・精神障害などになりますが、今回は認知症高齢者についてお話します。
そして、この成年後見制度を大きく分けると次の2つがあります。
「法定後見制度」(認知症になった後に家裁に後見人を選んでもらう)
「任意後見制度」(認知症になる前に本人の意思で後見人を指定する)
さらに法定後見制度については、「後見」「補佐」「補助」などに分かれますが、詳しい説明は割愛します。ここでは、成年後見制度には大まかに2種類のパターンがあり、任意後見制度は自分で後見人を指定できるが、法定後見制度は裁判所が決める、ということを知っておいてください。
認知症高齢者数と成年後見制度利用者数の現状
認知症高齢者数は、平成24年時点で462万人(内閣府資料)と65歳以上の高齢者の約7人に1人。今後はさらに増え、2025年には700万人前後になるという。
これに対し、成年後見制度利用者数は、平成29年時点で21万人(最高裁判所事務総局家庭局資料)
この数字を見て違和感を感じませんか?
認知症高齢者数と成年後見制度利用者数との乖離がすごくないですか?
上の方に成年後見制度は、被後見人の財産を管理したり、不利益な契約(法律行為)をして被害にあったりしないよう保護し支援する目的だと書きました。
保護して支援してくれるんだから、積極的に利用すべき制度のはずなんですが、実際の利用率は全体の5%足らず・・・。
これってほとんど機能していないに等しいですよね?
はいそうです。
成年後見制度には大きな落とし穴…幾つかの障壁があるんです。
成年後見制度は問題あり過ぎな制度
前述しましたが、可能であれば成年後見制度は利用しない状況にすることがベストです。
しかし、どうしても利用せざるを得ないこともあるでしょう。その場合は、法定後見制度ではなく任意後見制度が利用できるよう、事前に契約しておくなどの対策が重要です。
では、なぜ法定後見制度を避ける必要があるのか?
法定後見制度には大きなデメリットがあるからです。
法定後見制度のデメリット
後見制度開始までに時間がかかり過ぎる
管轄の家庭裁判所にて成年後見の申立てを行う
↓
審理
↓
法定後見開始の審判
成年後見人等の選任
↓
審判の確定→法定後見の開始
この手続きに要する期間が、一般的に2~3ヶ月と言われていますが、福岡では4~5ヶ月掛かると聞いたことがあります。
※3年ぐらい前に知り合いの司法書士から聞いた話なので、現在はもっとスムーズかもしれません。
また、手続きが煩雑ですごく大変です。聞いたところでは、手続きが大変だという理由だけで止める人もいるらしいです。
親族が後見人に選ばれにくい
成年後見人は家庭裁判所が決めます。
可能であれば親族が後見人になりたいですよね?ところが、親族が後見人なれる可能性は相当低いんです。
最高裁判所の平成29年分の資料だと、親族が後見人になれたケースは全体の26.2%です。主な後見人は、司法書士 28.0%、弁護士 22.3%、社会福祉士 12.4%などです。
これは裁判所にも理由があって、親族が後見人なると使い込みなどの不正が多いため、以前に比べ専門職の選任を増やしたそうです。
でもね、ここがイチバンこの制度が普及しない要因だと個人的に思う。
だって、いくら相手が弁護士や司法書士のように社会的信用のある職種だとしても、全く見ず知らずの人間が、親の全財産を管理するなんてイヤじゃないですか?
例えば、後見人の選任を専門職を主体とするなら、せめて親族の信用できる知り合いの専門職とかにして欲しいよね。裁判所としては公正さを保つことが最優先だから無理だろうけど・・・。
そもそも、親族が後見人になると不正が多いと裁判所は言うけれど、専門職の後見人の不正も表立ってニュースにならないだけで少なくないらしい。福岡でもけっこうあると聞いた。
福岡佐賀でそこそこ活躍している有名な司法書士から聞いた話なんで、ネタじゃなくて本当のことだと信じてます。
とにかく覚えておいてほしいのは、申請時に後見人の候補者を申し立てることは出来ますが、希望通りになることは極めて低いということです。
費用が掛かる、それも結構な額
【専門職後見人に対する報酬額の目安】
この他に突発的な業務が発生したら、その都度報酬が発生します。例えば所有の居住用不動産を3,000万円で売却したら約50万円の報酬が掛かるとか・・・。
そして、ここ重要です。
法定後見制度が開始されたら、途中で止めることは出来ません。
つ・ま・り・・・
後見終了まで、上記の報酬を支払い続けることとなります。
後見終了っていつ?
被後見人が亡くなるまでです。
ケースバイケースではありますが、年間約50万円程度の出費がずっと続くわけです。
法定後見制度を使わなくて済む方法
生前に財産を親族に譲渡する
これ現実的じゃないですよね。財産状況によりますが、まず税金がっぽりヤバイです。また、譲渡した相手が使い込んじゃったらさらにヤバイです…(´・ω・`)
認知症の症状が出始めたら早めに住まいを整理する
家族と同居するか施設に入居するか。そして不要になった住まいを売るか誰かに貸すか。売った場合の売却資金の運用については後述する家族信託(民事信託)を利用して運用する。
任意後見制度を活用する
どうしても後見制度を利用しなくてはならない状況になったとき、確実に親族が後見人になるために。
※任意後見人制度を活用する場合、細かいこと言うと家裁の選出による任意後見監督人への報酬が発生しますが、その額は法定後見人の報酬に比べかなり低いです。
家族信託(民事信託)を活用する
わりと新しい制度ですが、色んな意味で有効な手法です。使い方次第で現在の後見人制度のデメリットをガッツリ回避できる秀逸な制度です。
簡単に言えば、事前に財産管理について色々と柔軟な取り決めが可能です。ただし、節税対策にはなりませんので誤解のないように。
また、身上監護(本人に代わって行う、要介護認定の申請手続・住居の確保・病院への入院手続等)においては後見人が必要です。
※家族信託については奥が深いのでここで詳しくは書きませんが、興味のある方は直接ご相談ください。無償で頼りになる専門家をご紹介いたします。
ざっくりまとめると…
元気でしっかりとした判断が可能なうちに・・・
- 家族信託(民事信託)を利用し、財産(預貯金や不動産)の管理を信用できる身内に任せる。
- 事前に任意後見契約を締結する。
- 遺言状を準備する。
この3つを行っていれば、認知症になって物事の判断が出来なくなってしまっても、見ず知らずの人間に自身の全ての財産を委託しなくてはならない状況は避けられます。
また、ご親族の経済的負担を軽減できる可能性が高まります。
誤解のないように!
ご親族が後見人になったとしても、被後見人の財産を自由に使えるわけではありませんので!
不動産の売買や預貯金の使用は家裁の許可が必要で、簡単に許可は出ません。あくまでも後見人になるのは、身上監護が目的であって財産の運用活用については、家族信託(民事信託)で計画することが肝心です。
【補足】
この記事では分かりやすいよう「財産が凍結される」と大げさな表現をしていますが、被後見人の財産全てが全く使えないという意味ではありません。
家裁が必要性を認めたら所有不動産を売却したり、預貯金を使うことは出来ます。しかし、家裁の基本スタンスは被後見人の財産を守ることです。
簡単に言えば、財産の現状維持が基本です。つまり、財産を1円たりとも使わないことがベストです。ですから、被後見人の財産を使用するには相当な制約が掛かります。
また、後見人の判断にも大きく左右されます。
例えば、不動産に限って言えば、被後見人の居住用不動産は家裁の許可が必要ですが、非居住用であれば後見人の判断で行うことが出来ます。
ちなみに、後見人が被後見人に不利益になる不動産の売却などを行ったと裁判所が判断した場合、後見人は賠償しなくてはならない責任があります。
その不利益とは、相場よりも低すぎる価額で売却したり、売却したお金を被後見人本人以外のために使用する等です。
ですから、あまりにも勝手なことは出来ないようにはなっていますが、いずれにしても後見人の裁量に委ねるしかないことに違いはありません。
要は、被後見人本人が生活していく上で必要な資金については、後見人の判断で被後見人の財産の中から確保出来る仕組みになっています。
被後見人の財力で生活していた親族がいらっしゃった場合はどうなるんでしょう?
収入の低い配偶者や未成年の子どもに対する生活費は、被後見人の財産から基本的に認められています。しかし、必要以上のお金、いわゆる贅沢であると判断される類のものは認められません。
例えば、お子さんが家を建てるときの資金援助を約束していた場合とか、お孫さんが学費の高い私立の学校への進学を希望されていて援助することになっていた場合とか、どうなるんでしょうか?
おそらく断念するしかないんだろうなぁ・・・(´・ω・`)
さいごに
今回取り上げた記事では、最高裁は現状でほぼ利用されていない成年後見人制度をもっと活用してもらうために選任の考え方を改善しなさいという主旨です。記事内にも「利用者がメリットを実感できる仕組みに変える」と書かれてます。
しかし、いくら身内が後見人になれて見ず知らずの人間に資産を管理されたり、高い報酬を払い続けることを回避出来たとしても、被相続人の財産運用の柔軟性が実現出来なければ片手落ちだと思います。
ちなみに認知症高齢者が保有する金融資産は2018年3月時点で140兆円に上り、さらに高齢化が進む2030年には200兆円を超えると言われています。前述しましたが、認知症高齢者の資産は、ほぼ凍結状態になります。
これだけの資産を介護や医療に使われれば、介護及び医療の現場も助かるんじゃないのかなぁって、素人ながらに考えちゃうんですよね。
また、成年後見人制度には、使い込みなどの不祥事が根絶的出来ないというダークな側面もあります。この不正についての対策も同時進行で取り組んでいかなくてはならないでしょう。
成年後見人制度は施行されて20年弱しか経ってなく未熟な制度であり、もっと充実した制度になるには、まだまだ時間が掛かるのかもしれません。
しかし、1日でも早く高齢者やその親族のためになるより良い制度へと進展していくことを切に願います。
いつものごとくだらだら長々と書き散らしましたが、私がいちばん思う老後の準備で大事なことは、
認知症になったり寝たきりになるかもしれない高齢者の方自身が「どうしたいか」です。
もし、家族のことは知らん。めいめいが責任持って自分の人生考えろ。という考えでしたら、何もしなくていいと思います。 ボケた後や死んだ後に自分がどんな扱いを受けるか、家族がどういう人生を送るか、なんて気にしても仕方ないですもんね。
でも、配偶者や子どもや孫のために自分の財産を有効活用したいのであれば、何かしらの対策が必要だということだけは覚えておいていただきたい。
ピンピンコロリと行きたいもんですねぇ…(*´ω`*)
※この記事は2019年5月現在のものです。急激な高齢化が進んでいる状況で制度の改正がいつ起きてもおかしくありません。正確な情報は所轄官庁の最新の情報・資料をご確認くださいね。
今回はここまで。今日という日があなたにとって良い1日でありますように。